自分のための勘違いの技術「回帰効果の誤認」とは?
他人の反応に左右されないように、セルフトークをする
質問者: 趣味でシャンソンを歌っていて、将来プロとしてやっていきたいと言っている友人がいます。 バーやラウンジなどで歌う機会があれば、お客さんの反応もわかるし、それでお小遣いも稼げたらいいな~とよく言っていました。 知り合いが、ピアノバーでシャンソン歌える人を探していると聞いたので、繋いであげ、うまく話が進んだようです。
石川: すごいじゃないですか。
質問者: 私としては、すごく良いことをしたと思っているのですが、彼女から「あなたのおかげ」といった感謝の言葉がなく、そのことにモヤモヤしています。
質問者: 一方で、未来の私は影響力のある立場になっているので、人と人を繋ぐことが日常となっており、いちいち御礼が無いとか言ってないと思うので、今そうやって感謝が感じられないことを気にしていることがちっぽけに感じます。
石川: 未来の自分だったらそんなちっぽけなことで悩んで無いとは思うんですよね?
質問者: 思います。逆にそうやって人繋ぎができたということは、ゴールに近づいているのかな?と思ったりもするのですが、未来はそうだからと思っても納得できない部分があって、気持ち的にモヤモヤしています。
石川: 前は人と人を繋げてあげようとか、そんなこと思わなかったんですよね?
質問者: この人とこの人繋いだらいいだろうな?とか思いつくことはあったのですが、友達が先にうまくいくのが嫌だと思ってしまって、出来ていませんでした。 でも、私は応援されたいし、応援する人になりたい。 自分が欲しいものを先に出すのが良いと聞くし、未来の自分なら当然しているだろうし、と思ってやってみました。
石川: たとえば「これだけのことをした自分は素晴らしい」というセルフトークをするという方法があります。
質問者: 正しいセルフトークを続けたら、しばらくは感謝が無いことにむかついても、素晴らしい自分になったら気にならなくなるということですね。
石川: そうです。 そして相手が先に成功し、一時的に先を越されて悔しい思いするかもしれないけど、「私はその先にもっとすごい存在になるから関係ない。かわいいものだ」という風に思います。
質問者: そうやってエフィカシー下げないということですね。一時的に先を越されることはあってもいい。
石川: そうです。エフィカシーは、花に水をあげるように自分でケアしていくものです。
質問者: 相手が成功し、負けたとする時点でエフィカシー下がっていますね。
あらさがしと同じように、良いこと探しをする
石川: そうそう。粗探しの逆、良いこと探しをすればいいです。起こったことが良いことであるという前提で、なぜ良いのか探し出します。
質問者: こじつけで無理やり探すんですね。
石川: こうだからダメとか、粗探しはいくらでもいえます。なので、その逆も簡単です。
その人は、もしかしたら本音でお礼をいうことがシャイで恥ずかしいだけかもないし、「あとで何かのカタチで必ずお返ししよう」と思っているかもしれませんね。
質問者: 「シャイでお礼が伝えられない、本当は感謝を感じているに違いない」ということにしておくということですね。相手が本当はどう思っているかはわからないですものね。
質問者: でも、私の応援はしてくれないのです。セミナーすることをFacebookにあげているので、シェアぐらいしてくれてもいいのに…と思うのですが、してくれません。
石川: そのひとは自分が求めるステージじゃないというだけです。 質問者さんが求めている人間関係の人は、それなりのことを返してくれる期待感がありますよね?
質問者: そういう人達とつきあっていきたいと思っています。でも、期待感持ってるのはいやらしいという気もします。
石川: いやらしくないですよ。だってもし、もし質問者さんがお金を払ってコーチングを申し込むなら、変わるのは当然と期待しますよね? それは、相手をすごい存在だと思っているからこそ芽生える期待感です。未来の質問者さんはそういうステージにいるはず。ただその相手がそのステージに満たなかっただけです。
スコトーマは自分にもあるという視点をもつ
質問者: 自分で言うのはなんだと思いますが、彼女はしてもらったということが見えてないのでしょうか?
石川: 親と子の関係でいえば、たとえば3歳とか5歳の子供が、親にどれほどのことをしてもらっているかわかりませんよね?それと同じです。
質問者: ゴハン食べさせてもらって当然、お手洗いに連れて行ってもらって当然。そんな感じですね。
石川: 親の方が見える世界が広い。質問者さんはしてあげたと思っているけれど、本人にとってはしてくれているという風に映っておらずスコトーマになっている可能性があります。 でも、その子が大きくなって結婚式のときに「お母さん、生んで育ててくれて、毎日美味しいご飯を作ってくれて、ありがとう」と手紙を読み上げてくれたりするう。今はスコトーマになっていても後で気づいたりもします。
質問者: スコトーマになるんですね!! 私だったらお返ししたくてたまらなくなると思います。
石川: 逆にいえば、質問者さんも同じことをやっている時もあるかもしれませんよ。「自分は見えている、分かっている」と思っていても確実に見えていない、分かっていないことがある。スコトーマというのはそういうもの。 どれだけ見えていると思っていても見えてないものがあって、それは誰にでも起こることです。
質問者: そう聞いたら彼女がかわいく見えてきました。
石川: だけど、「これだけのことをした自分は素晴らしい」というセルフトークする。アーティストの斡旋を、無償でやられたんですよね?ビジネスにして、手数料もらってもいいぐらいです。(笑)ですが、それくらい価値あることを楽勝で大切な人に与えているのが嬉しい。 それぐらいすごいことをやったんだと、粗探しの逆をして自分で自分を認めていきます。
自分のための勘違いの技術「回帰効果の誤認」とは
石川: そして、そういう素晴らしいことをやったことは、絶対返ってきますよ。
質問者: 私もそう思っていたんですが、「いいことをしたから絶対返ってくる!」と思っていいんですね。
石川: そうそう。「いいことをしたからいいことが起こる」ことは論理的におかしい。いいことも悪いこともそれぞれ同じように起きているけれど、「いいことがあったのはいいことをしたからだ」と意味づけをすることによって因果関係をあるように誤認する。
それは、認知科学で言う「回帰効果の誤認」です。回帰効果の誤認は、サイコロを振るときに応援して大きな目が出たら「応援のおかげだ」と勘違いする、という研究などがありますが、サイコロの目はそれぞれ同じ確率のはずなので、そこに因果関係はまったくありません。それと同じです。
石川: でも、誤認して意味があるのならどんどん誤認すればいい、と僕は思います。いいことをして「こんなに人のためにいいことをしたのだから将来絶対何かのカタチで返ってくる」と本気で勘違いすれば、脳はそれを実現する情報を集めますから、ハッピーなのです。
質問者: なるほど。面白いですね!石川さんにそう仰っていただくと本当にそうなんだろうなぁと確信を持てました。ありがとうございました。
本日もお読みいただきありがとうございました!
聴き手(質問者)と文章の書き起こし担当: 宮野明子